Ypres from above

フランダース地方の文化遺産には、まるで深い海のような奥深さがあることをご存じでしょうか。どの町でも、ユネスコ認定の世界遺産はもちろん、それほど知られていない秘められた遺産の数々が訪れる人を待っています。アントワープ、ブルージュ、ブリュッセル、ゲント、ルーヴェン、メッヘレンといったフランダースのアートシティの見どころを散策してみませんか。

ユネスコの世界遺産

フランダースの文化遺産というと、まずブルージュを思い浮かべるかもしれません。歴史的な建物が並ぶ印象的なマルクト広場曲がりくねった中世の小道と運河鐘楼大聖堂初期フランドル派の名作など、数え上げたらきりがありません。ユネスコが、ブルージュの歴史的な旧市街全体を世界文化遺産に認定したのもうなずけます。ブルージュの歴史ある小道を散策すると、次々と思いがけない発見に出会えるでしょう。

ブルージュは街の中心が美しいというだけではありません。たとえば、歴史的なカフェ・フリッシンゲ(Vlissinghe)を訪ねてみましょう。500年以上経った今もなお人気のカフェバーです。楽しくお酒を飲みながら、壁にかけられている歴史的な絵画、写真、文書などを楽しむことができるのです。

Bruges city centre, view on a canal

神秘の子羊と4つの塔

ファン・エイク兄弟による神秘の子羊は世界で最も偉大な芸術の至宝の一つです。この象徴的な多翼祭壇画は、1430年代ゲントにある聖バーフ大聖堂の礼拝室のために描かれました。この傑作は現在、3つの部分に分かれて少しずつ修復が行われています。ゲント美術館(MSK)で修復中の3分の1を、残りは昔と同じ場所、聖バーフ大聖堂の礼拝室で見ることができます。ファン・エイク年を迎える2020年初頭にメインのパネルが修復を終え、聖バーフ大聖堂にて再び一堂に公開される予定です。

ゲント美術館のすぐ近くに、あまり知られていない穴場ともいうべきブック・タワーがあります。この素晴らしい建物はアール・ヌーヴォーの先駆者ヘンリー・ファン・デ・ヴェルデによって建てられたもので、300万冊以上の蔵書を誇るゲント大学の図書館として長年使われています。数世紀にわたってゲントのランドマークとなっている、聖ニコラス教会、鐘楼、聖バーフ大聖堂という3つの塔がよく知られていますが、19世紀の近代的なブック・タワーも街を象徴する4番目の塔なのです。

Ghent - het Lam Gods (the Adoration of the Mystic Lamb)

ルーベンス、ルーベンス、そしてルーベンス

ペーテル・パウル・ルーベンスは史上最も偉大な芸術家の一人です。彼はアントワープ出身で、今もアントワープという都市を特徴づけるバロックを代表する芸術家です。バロック様式の数々の建物や芸術品はアントワープの黄金時代を思い起こさせます。当時のルーベンスの影響力はとても大きなものだったため、アントワープでは今もこの巨匠に大いなる敬意が払われています。かつてルーベンスの住居兼仕事場だったルーベンスの家 や単独のミュージアムとして初めてユネスコの世界文化遺産に認定されたプランタン・モレトゥス印刷博物館で、ルーベンスの作品を鑑賞できます。また、全体が偉大な文化遺産といえる聖母大聖堂でもルーベンスの傑作が複数、鑑賞できます。

聖パウロ教会にも、ルーベンスの素晴らしい作品があるのですが、あまり知られていません。17世紀に修道院併設の教会だったこの建物は、ルーベンスが設計を手掛けたもので、美しいバロック様式の祭壇、200点以上の彫刻、ルーベンス、ヤコブ・ヨルダーンスアンソニー・ヴァン・ダイクらの傑作を含む50点余りの絵画があります。

Antwerp - de Grote Markt (the Market Square)

ゴシック様式の市庁舎と動物研究所

ゴシック建築には、とても面白いものがあるということを、ルーヴェンの街ははっきりと教えてくれます。15世紀の後期ゴシック建築の特徴がふんだんに観察できる外壁で有名な市庁舎は、ルーヴェンの歴史に名を残した236体以上もの人物の像で飾られています。この 「偉人の殿堂」は精巧に作られているため別名「石のレース」とも呼ばれます。華やかな旗で飾られた、とても個性的な建物なのでお見逃しなく。

ルーヴェン・カトリック大学(KU Leuven)動物研究所のように、あまり知られていない貴重な場所もあります。グリーンランドの鯨、アメリカの旅行鳩(北米東海岸に棲息していた渡り鳥)、絶滅したとされるシーラカンスなど5,000以上の剥製があります。このちょっと変わった遺産も、気になった方はぜひ訪れてみてください。

Leuven - City Hall (stadhuis)

ベギン会院とブルゴーニュ公国

そこは、かつてフェミニストの先駆けとも言える女性達の住むところでした。フランダースのベギン会院は、今日もなお、静けさと瞑想の空気を漂わせています。12世紀以来、ベギンと呼ばれ、生涯を神に捧げた未婚の女性達が、ベギン会院という場所で独自のルールのもと平和に暮らしていました。メッヘレンには、ユニークな特徴を持つ、美しい大ベギン会院があります。もともとあったベギン会院は、16世紀中頃のプロテスタントによる聖像破壊運動で壊されたため、ベギン達はメッヘレンの城壁の内側の新たな場所に移り住みました。威厳ある入口の門を一歩くぐると 、都市の喧騒の中に、静寂の空間が立ち現れます。

ベギン会院、教会、大聖堂に加えて、メッヘレンには多くの大邸宅や立派な家があります。たとえば、街の中心にある16世紀の荘厳な都市宮殿ブスレイデン邸はミュージアムになっています。メッヘレンでは、こうした歴史的建物の中で、フランダースの巨匠による傑作の数々を楽しみ、ブルゴーニュ公国の宮廷文化を追体験することができるのです。

Mechelen - Hof van Busleyden

華やかな市庁舎と現代アート

ブリュッセルを象徴するグラン・プラスは、ベルギーの首都ブリュッセルの数ある文化遺産のハイライトです。荘厳な広場は数々の文化遺産に囲まれています。まず目につくのは、15世紀初めに建てられた堂々とした塔のそびえ立つ華やかなゴシック様式の市庁舎。この建物のまわりにも、豪華な技巧の例をたくさん見つけることができます。たとえば、広場を取り巻くギルドハウスに施された金箔や装飾は、日の光を浴びて美しく輝いています。

ブリュッセルは、歴史と現代がうまく融合している優れた都市です。その好例が、モダンアートミュージアムカナルです。この新しい美術館は、モダニズム様式で建てられた自動車工場の建物を利用しています。現在のところ特別展のみが不定期に開催されていますが、近い将来、独自の現代アートコレクションによる常設展示を行う予定で、すべてが完成すればブリュッセル版ポンピドゥー・センターとなる期待のプロジェクト。建築を観るだけでも、十分楽しめる場所です。

Brussels - Grand' Place (Grote Markt)

フランダースでは、伝統を見て、感じて、味わうだけでなく、同時に未来の文化遺産も体験することができます。アントワープブルージュブリュッセルゲントルーヴェンメッヘレンという素晴らしいフランダースの芸術都市を巡る旅で、今の文化遺産も発見してください。

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